遺跡

高島おばけと小樽にある遺跡群手宮洞窟、ストーンサークルなど)に関係があるとはまったく考えていなかったのですが、トリブッチ氏の『蜃気楼文明』や『蜃気楼の楽園』(ヘルムート・トリブッチ、渡辺正 訳、工作舎)という本を読んで、その考えが少し変わってきました。

これらには、現実に起こる自然現象が古代人の宗教心を形作るという説を唱えていて、その中でも蜃気楼が相当な影響を与え、通常に見える像(=正立像)は現世で、反転した像(=反転像)や伸上がった像などを来世神の使者などと考えたと述べています。

そこで、この独特な発想を『高島おばけ(=上位蜃気楼)』の場合に当てはめてみることにしました。まず、私が撮影した以下の画像を見てください。

反転像がある高島おばけ
反転像がある高島おばけ

上左画像は、タンクの反転像。中央画像及び右イラストは、トド岩天頂部(白い点線部)の反転像+正立像のトータル3像の珍しいものです。皆さん、どんな印象を持ちますか? 科学的知識がない古代人がこのような姿を目の前で見たら心や感性が揺さぶられるというのも無理からぬことだと考えませんか。

結び紐のある高島おばけ
正立像と反転像を結ぶ「柱」のある上位蜃気楼

さて、トリブッチ氏の著書には、正立像と反転像を結ぶ線というのか、糸状のもの、柱状のものを結び紐』、『天から下がる綱』、『へその緒などと呼んでいます。天国への架け橋との解釈のようです。

それは、個人的には最初は『のろし』のように見え、その後、『』のように変わってゆくという印象を持っています。古代人なら、それを龍が天に昇るとか、あるいは、天から降りてくるイメージを持つかもしれません。(歴史上の人物:榎本武揚を参照

ところで、蜃気楼がたびたび目撃される小樽周辺(小樽市~余市町)には、大小あわせ約80基の遺跡・環状列石忍路[標高約20m]、地鎮山[標高約50m]、 西崎山[標高70m]など)が見つかっています。[古い列石は約3500年前のもの]---ref.その他の小さなものは、西崎山近くに集中している。

忍路環状列石   地鎮山環状列石
西崎山ストーンサークル    そこから望む余市湾・日本海

トリブッチ氏の書籍に、蜃気楼が発生する場所には、遺跡が多いと指摘していることから、小樽~余市町にもそれらが点在していて、共通点があるように思えます。実際に、私が主だった環状列石(ストンサークル)の場所に行って確認しても、ここは蜃気楼観測に適した場所に近いという印象を持ったのです。

高島おばけ発生可能性と遺跡の位置
蜃気楼の対象となる方向(推定)と遺跡位置   ◆クリックで拡大表示

現在は、周りの木々や海側の丘などで見えにくいところもあるが、その当時、そこから高島おばけ(=上位蜃気楼)を直接見る場合と船取山(211m)などの小山や丘から蜃気楼の対象物を見る際の照準器、または座標線的役割を果たす間接的なものだったかもしれません。あるいは海側から見る場合も考えられるでしょう。

また、これらの環状列石が、死者の魂を来世へ送り込むための墓地であり、神官やシャーマンなどが儀式を行う場であるという定説は、トリブッチ氏の指摘とほぼ一致しているようです。
(ref, 小樽近郊の環状列石は、現時点でもっとも有力な説は墳墓説だそうだが、他に祭場説日時計説、立石説、UFO説などがある)

 

さらに、一般的に、環状列石のそばには、三角形の(低い)山が見られるといわれていますが、実際に、すぐそばにその名も三角山(約130m)という小山がありました。また、この環状列石自体、三つの笠を伏せたような山、三笠山の麓にあるのです。これも偶然なのでしょうか。

著書には、遺跡の近辺に蜃気楼現象を表現した文様図形が見つかるとも書かれていますが、時代こそ違え、 小樽にもおよそ1600年前に描かれた手宮洞窟フゴッペ洞窟壁画陰刻画)、彫刻群があります。

それらの文様の多くが、神官やシャーマンなどの姿や反転を伴う地形の蜃気楼像、あるいは鳥や蛇、動物などの(合成)イメージなのかもしれません。それが、トリブッチ氏の著書に出てくる絵などと何となく似ているから不思議です。 ⇒以下の画像は、蜃気楼化してできた砂浜や沿岸の模様と小樽(周辺)に残されている陰刻画

ドリームビーチの砂浜 石狩周辺の砂浜   
手宮洞窟保存館と陰刻画
フゴッペ洞窟(余市町)と陰刻画

【参考】トリブッチ氏の著書『蜃気楼文明』などを基に、テレビ東京30周年記念特番『蜃気楼の王国』(1995年3月21日放送; 日本民間放送連盟賞-テレビ教養部門優秀賞)という題名で、また、『世界ふしぎ発見』(TBS)でも『ロード・オブ・ザ・ リング/王の帰還 消えた謎の王国を探せ』という題名で2004年2月14日に放映され、話題をよんだ。

なお、著作権は撮影者・製作者にあります。許可なく転載・複製を禁じます。
(Copyright© 2004-2023 by s.s  All rights reserved)