蜃気楼Q&A
どうして上位蜃気楼(じょういしんきろう)が起こるの?
光の屈折現象のために起こります。暖かい空気と冷たい空気との屈折率の差によって、光が曲がるために蜃気楼が発生します。学校では、基本的に光は直進すると習うのですが、状況によりわずかに屈折するのです。
上暖下冷の空気層(=気温の逆転現象が生じる)ができると上位蜃気楼(または、上方蜃気楼)、下暖上冷だと下位蜃気楼(または下方蜃気楼)ができる要因が整います。
真空を1とすると、空気の屈折率は、気温0度では1.000292、15度では1.000277、30度では1.000263ぐらいです。 数字だけを見るとごくわずかな違いです。また、気圧や波長、水蒸気などによっても屈折率に影響を与えるそうです。ちなみに、水の屈折率はおよそ1.333です。
最近では、人工的にこの現象を作って、理科や科学の学習に役立てているところがあります。方法としては、水槽に『水』と『塩水』を入れて行う場合が多いようですが、『水』と『砂糖水』の組み合わせや、筒状の箱に電熱器や保温器を取り付けて行っている方法もあります。興味のある方は、お近くの科学館や博物館、学校などに問い合わせてみるとよいでしょう。
尚、上位蜃気楼になった場合の対象物の見える形(像)は、見る側の目線の高さのほか、その距離と、上暖下冷の環境、特に温度勾配(こうばい)に主に左右されるので、その像が、反転像を伴うまでになるかどうかは、これらの点に注意を払うとよいでしょう。
サイト上で、より正確な知識を知りたい方は、『北海道・東北蜃気楼研究会』を見ると参考になります。
蜃気楼が起こる他の地域の環境や気象条件などは参考になるの?
おそらく半分は参考になりますが、半分は参考にならないでしょう。
これは、上位蜃気楼の発生原因といわれる原理原則(に近い)部分は、参考になっても、各地域の地形や環境などは、それぞれ違いますので、参考にならない部分も多いと思われます。
たとえば、晴れて、気温が上がり、風・波が弱く、午後にというのが、ほぼどこでも共通しているようですが、 琵琶湖周辺では、気温と水温の差がそれほどなくても(数度程度でも)上位蜃気楼が発生するようです。
ところが、小樽近辺では、最低でも6~7℃以上、通常は10℃程度の差がないと発生率が低いようです。
また、気温の逆転層の高さについては、魚津では、低めで約10m以下が多く、一方、小樽を含む石狩湾では 低いケースもありますが、およそ25m前後の高さの場合が多いように思われます。
また、対象との距離が、各地域で微妙に違います。
- 魚津では、10~25Km(最小5Km、最大40Km程度)
- 琵琶湖周辺では、10~15Km(最小4Km、最大60Km程度)
- 小樽近辺では約12Km~40km(最小4Km、最大65Km程度)
の場合が多いようです。
海岸近くでないと上位蜃気楼は見られないの?
頻度は少ないかもしれませんが、平地や渓谷、高い山からも見られる場合があります。残念ながら、私は見たことがありません。『北海道・東北蜃気楼研究会』のサイトには、 (山から見た)山の上位蜃気楼を紹介しています。 『冬』に見られるのはとても珍しいケースかもしれません。
(高い)山々の場合は、 見る方向の手前に、盆地や平野があり、その地表面が放射冷却などによりかなり冷え込む単純な場合と、それに加えて上空に暖かい空気層が流れ込む複合的な場合に発生するようです。(上位蜃気楼発生の原則:上暖下冷の空気層)
ところで、小樽から山の上位蜃気楼を見たい場合は、おそらく石狩平野越しに見る夕張岳あたりの山々か、あるいは、過去の目撃情報があるといわれる増毛連峰方面を狙うのが楽しいかもしれません。
ただ、いずれにしろ、上位蜃気楼がどんなものか、まずは、春から初夏の頃に海や湖などの広い水面があるところで、一度見ておくほうがよいでしょう。その後で、冬の時期を狙うのがよろしいかと思います。
ちなみに、海外サイトでは、ニューメキシコ州(U.S.A.)アルバカーキ東方のサンディア山脈で、上位蜃気楼が見られるところが紹介されていました。ここでは水面があろうがなかろうが、比較的頻繁にどのシーズンでも条件しだいで見られるそうです。
昔、海外で見られた上位蜃気楼はどんな感じだったの?
カメラなどが一般に普及する以前の蜃気楼イラストを見つけましたので、少しアレンジしてご紹介しましょう。
これは、1952年9月18日に記録された船の蜃気楼のイラストです。船長と三等航海士が見た北大西洋で目撃されたものです。
24Km地点ですでに船が伸び上がっているのを確認し、16Km地点では船体や波までも伸び上がっていたそうです。そして8Kmまで近づくと元の形に戻ったそうです。
もう1つは、1955年3月2日に南アフリカ、ケープタウン沖から約45Km離れた丘の蜃気楼です。一等・二等航海士が目撃したもの。
丘の高さは約85mで、ブロックのような形になるまで、その反転像が伸び上がったり、縮んだりしていたそうです。このような記録も海外では、船乗りを中心として残っています。(本来、反転像を伴う上位蜃気楼の場合は、正立象、反転像、正立像という順番で上部に現われるのが普通です)
『水上を歩く人』と蜃気楼とは関係があるの?
昔の文献には、『水上を歩く人』について書かれているものが確かにあります。たとえば、聖書(マタイによる福音書第十四章二十五節など)や仏典、古代ギリシャ文献などです。
それが、すべて蜃気楼によるものであるかどうか、わかりませんし、確認もとれませんが、蜃気楼であった可能性はあるかもしれません。
ただ、それがもし蜃気楼であった場合、肉眼でも見られる比較的短い距離(5~6Km以下)で発生したものであっただろうと思います。私が知っているものでは、アメリカのサイトで、2人の人物が海上を歩いているように見える画像(静止画)が公開されていますので、サイト検索して探して見てみるとよいでしょう。
また、おそらく同じものと思われる画像が本の表紙に使われているようです。『蜃気楼はどうして起きるのか One point science』 (アリステア.B.フレーザー 日経サイエンス 1984)です。ご興味のある方は、図書館等で確認してください。
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